生きるために必要な本
これまでの人生で写真集というのは数えるほどしか買ったことがありません。数少ないうちの一冊が、これです。
地を這うように―長倉洋海全写真1980‐95 (フォト・ミュゼ)
- 作者: 長倉洋海
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/06
- メディア: 単行本
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20歳になろうとしている私は、この本の新聞広告を見て学校の帰りに買いに行った記憶があります。5000円近くするものですし、写真集なんて買ったことなかったわけで、家族にも「なにかあるの?」と聞かれた記憶があります。でも、特になにかしら理由があったわけではなく、広告を見て「これは見なければ」と強く思っただけでした。
私は高等専門学校の5年生で、大学へ編入しようと思いつつもなかなか勉強に身が入らず、部活動も最後の大会が目の前なのになにか没入しきれない、という状況でした。今、考えると判断して決断しなければいけなかったところ、そこまでの危機感というか、流れに任せるというか、煮詰まってなかったんでしょうね。ただ、何かやらなきゃという焦りみたいなものはあったわけで、なにか自分の中に確固としたものがない、というモヤモヤしたものはあった気がします。
それは、今考えると勇気だったと思います。そして、それこそが大人と子供を分ける唯一の要素だと私は考えています。ともあれ、自分がこの世界で立ち続けるためのなにかを求めて、私はこの写真集を買ったのだと今になってみると思います。
購入した写真集を見ながら衝撃を受けたことは当然なんですが、どういうことを思って、何を考えたのかはあまり覚えていないのが正直なところです。たぶん、圧倒されて呆然としながら写真を見ていたのではないかなと思います。当時購入した写真集は現在も実家にありますが、ヨレヨレになっているので繰りかえし見ていたのにも関わらずこの体たらく。作者の長倉洋海氏に申し訳ないな・・・とも思います。
ただ、その後の私は、人生に対して決断が下せるようになったと思います。大学へ進むにあたり、自分が求めていることを考え、素朴なあこがれとかを切り捨てつつ前へ進むことができたし、あきらめることも含めて決断することができました。困難な道と、ある程度先が見えて平坦な道があったとして、前者を選ぶこともできるようになりました。これは社会人になった今でも、私を形作る大切な流儀だと思います。
この写真集のどこかにそんな力があったのか、それとも私が大人になる時期になにかしらのきっかけになってくれたのか、もう詳しいところはわかりません(自分ではなおさらわからないのかもしれません)。しかし、20歳当時の、なにもかも中途半端で、でもなにかしら自分のモヤモヤした空虚さを埋めるものを求めていた私に、生きる覚悟を与えてくれた写真集だったのだなと。
また、長倉氏と言えば、アフガニスタンの英雄マスードに密着し著した書籍や写真集ですが、マスード亡き後も紛争地帯での写真を撮り続けています。久しぶりに写真集を買ってみようか。。。以下の2つとか。