父と子の物語(4、情熱を貫く)

父と子の物語と銘打ってシリーズを書いてきたものの、予想外に時間がかかってしまったり、シリーズ内でも直前に取り上げる本を変えたりしてしまい、どうしようか迷ってるのですが、これはライフワークとしてやっていこうかなんて若干思い始めています。なかなか感じることが多いこのテーマ、涙腺の弱い私としては取り上げたくなる本が多いのです。。。

で、今回は元日本代表によるこの本です。

情熱を貫く 亡き父との、不屈のサッカー人生
 

 この本、2014年のワールドカップ前に新宿のブックファーストで立ち読みしたのです。そのときに涙が止まらなくなり、これはマズいと購入して帰りました。著者自身のサッカーへ向かう姿勢、父親との約束、魂を揺さぶるプレー、それらは父を持つ息子たる私を震わすものです。また、息子を持つ父としても、何を息子にしてやれるのかという大きな命題をもらった気がします。

とまぁ、ここまで書いてきてお察しいただける通り、この本こそがこのシリーズを書こうと思った理由なのです。読了後に、心の中のいろんなものが洗い流されて、そこに新しいエネルギーがどくどくと流れ込むような、まさに心をチャージするような感覚になりました。

大久保嘉人という選手については、サッカーにあまり詳しくない人には「ちょっとヤンチャそうな人」みたいなイメージでしょうか。サッカーにそこそこ詳しい人もその印象をベースに「よくカードをもらう」「川崎で得点能力を開花させたが基本はスピードを活かしたアタッカー」みたいなイメージでしょう。で、それは当たってると思います。

付け加えるなら、非常に素直でもあるし、情熱をもってサッカーに向きあい、チームに貢献できる選手だということですね。特に、情熱をもって取り組むが故の衝突や、情熱を使い果たしたときのメンタル的な落ち込みを経験して、人間的な成長を遂げた選手だというのが彼の特徴です。

特に2010年のワールドカップではこの傾向が強いです。この大会、直前まで中村俊輔を中心としたボールを持ってプレーをするチーム方針でしたが、本大会ではある程度ボールを持たず守備を固めた状態から、スピードあるアタッカーが「攻め切る」戦略に変更になりました。直前までは大久保は半レギュラー的な位置づけでしたが、本大会ではレギュラーとして主に前線の左に張ったポジションで出ていました。右の松井大輔と左の大久保は攻めにかける人数が少ない中、テクニックと運藤量で攻めるスペース・時間を作り出す重要な役割を果たしていました。

この大会、試合はすべて見ましたが、前半から激しく動き回り、後半途中にはガス欠になってしまうレベルで、見ていて頼もしかったですね。

惜しくもベスト16で終わった本大会後、彼はオーバートレーニング症候群となり、奥さまの実家である離島で療養します。復帰してもなかなか結果は出ずに、川崎へと移籍するのですが、この間の苦しさがこの本からはよく読み取れます。情熱を使い果たした人間がどのようにその状態を脱して復活できるものなのか。

彼は苦しい中、もがき、決断し、熱意ある指導者と出会い、父の言葉に打たれて、再び日本代表を目指します。

本の最後に、父への手紙(彼自身の肉筆!)が載っています。内容もさることながら、字がきれいなんですね。これをいつでも見れるというだけで本買う理由になります。

自分が父に抱いている想い、息子に何をしてやれるのかという問い、それらについて何かしら感じていたり悩んでいたりする人(私です)にとって、とても、とても強く背中を押してくれる本だと思います。