セッターに必要なものは勇気である。

久々にNumberでバレーボール関係の前向きな記事を読みました。

number.bunshun.jp

これまでの正セッターであった深津選手(彼はこのチームのキャプテンでもあります)を差し置き、今季のワールドリーグからスタメンで出ている藤井選手を中心にした記事です。

バレーボールというのは、試合のテンポ的に野球に似ていると思います。これは日本のバレーボール人気を考えるいいきっかけだと思いますが、ボールの配球という意味で野球のキャッチャーとバレーボールのセッターはよく似てます。

かくいう私も中学自体にバレーボールをやっておりまして、ポジションはセッターでした。このポジションは他のポジションと比べると専門性が高くて、他のポジションならどこでもできる人でもセッターはなかなかできないものなのですね。これは主に技術的な側面が大きいのですが、メンタル的なところでもなかなか難しいようです。

今回の記事では、藤井選手のトスワーク、特にセンターのクイック中心に攻撃を組み立てていく部分を取り上げています。センター中心に使うことによりここにブロッカーの注意を引き寄せて、端っこからの攻撃(いわゆるウイングスパイカーのアタック)へのブロッカーの一歩目を遅らせる効果があります。ウイングスパイカーはブロック2枚ではなく、1.5枚を相手にすればよくなるわけで試合終盤までフレッシュな状態で戦えることになります。

一方で、これはセンターを軸に攻撃を組み立てるので、ある程度の確率でセンターのクイックはブロックされるわけです。Aクイックのような早くて基本的な攻撃は、ブロックされると失点に直結するものです。それを受け入れて、ブロックされてもクイック攻撃を継続するには、セッターにチームへの信頼感と勇気が必要です。

…とまぁ、ここまでは当然の至極当然のことを語ってきたわけですが、ここからは実際にセッターをやっていたものとしての偽らざる想いを吐き出したいと思います。

特にセンターを使い続ける勇気について。

中学時代の私にはこの勇気はありませんでした。これは、正直な感想です。Aクイックをあげてシャットアウトされるのが怖かったのですね。Aクイックでシャットされたら、アタッカーに責任はありません。アタッカーにブロックをよけるだけの余裕はないので、そこを選択したセッターの責任です。それはだれの目にも明らかなことなのですね。

それを自分の選択の間違いとして、絶対に失敗しない選択をすると自分に非がない、アタッカー自身である程度対応の余地があるウイングスパイカーのアタックを選択してしまうのです。しかし、それではウイングスパイカーが疲弊してしまう。結局、チーム全体としては接戦になればなるほど弱くなる。失敗しない、負けないことではなく、勝つためにチームとしてどういう戦術を取るのか、それにはどの程度失敗が許容されるのか、これらを話しておくことが必要なんですね。

シャットアウトされたとしてもそれをある程度しょうがないこととして受け入れ、切り替え、次のプレーに臨む。それには信頼関係が必要です。また、小さな失敗を受け入れながら、大きな失敗を回避するという姿勢を継続するには、勇気が必要です。

自分には勇気がない。

中学時代のプレーを振り返って、そう思えるようになったのは、数年経ってからでした。認めたくない気持ちがありました。なかなか難しかったですね。

セッターは勇気がなければ務まらない。早く正確なトスアップだけでは、チームを勝利に近づけることは到底無理です。それを思い出した、この記事でした。