警官の掟

 佐々木譲の新刊文庫「警官の掟」を通勤中に読んでいたのですが、後半からラストまでは家族が寝たあとに家で読んでしまいました。そして、読み終わったあとは大きな虚脱感に襲われる、そして少し時間を空けて再読するでしょう。

警官の掟 (新潮文庫)

警官の掟 (新潮文庫)

 

 著者は警察小説では様々な著作がありますが、なかでも「警官の血」は類まれなる傑作です。

 特に、父と息子の関係、息子が父に対する想いを抱きながら、業というか血というか、抗えないものとともに生きていく物語は、荘厳でさえあると感じました。

警官の血〈上〉 (新潮文庫)

警官の血〈上〉 (新潮文庫)

 
警官の血〈下〉 (新潮文庫)

警官の血〈下〉 (新潮文庫)

 

 で、「警官の掟」ですが、小説の構成からいうと2組の捜査が順番に語られて最後に交わる、という形になっています。この構成も物語の雰囲気とマッチしていて、その他いろいろな対比としても有効に働いていると思います。

また、著者の小説の中でも、捜査のディテールが非常に書き込まれているところがあり、東京の地形や風土みたいなものに興味ある方にはストライクではないかと。私自身、警察小説ということと同等くらいの興味でそちらの内容も楽しめました。著者はその土地の地形・風土などもさまざま書き込んでいます。

今回の舞台は、品川〜蒲田〜川崎という産業道路沿いを舞台にしていて、そういうところの雰囲気が気になっている人(少数派か・・・)には大きな魅力です。ま、以下のようなサイトが気になっている人のことですね。

portal.nifty.com

この小説のラストの迫力、セリフの重さは圧倒的で、ぜひ最後まで読んでいただきたいわけですが、ハマって読むと私のようにちょい虚脱感に襲われて数日仕事が手につかない状態になるかもしれませんが(私がナイーブすぎるのか)、それもよいのではないかと思います。

 

一言でいうと、やはり圧倒的な小説だなと。人生に必要な教養って、こんなものじゃないかな、と遠くを見ながら感じたりしました。