父と子の物語(2、血と暴力の国)
父と子の物語シリーズ、その2ではコーマック・マッカーシー「血と暴力の国」でございます。
- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2007/08/28
- メディア: 文庫
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原題は「No country for old men」で、映画版も同じタイトルですね。日本語版は若干省略されて「ノーカントリー」になってましたが。。。
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内容的には、クスリの取引でどっかのマフィアが争いのなったところを遠くから見てた男性が金を持ち逃げして、殺し屋に追われるというお話し。この殺し屋を追う保安官がトミー・リー・ジョーンズでどちらかというとわき役なんですが、なかなかいいキャラクターで終章は彼の独白で終わります。で、ここに父と子の物語がある。そこ以外には特に親子の話ってないのですが、何かしら血は水よりも濃いところを感じさせる小説ではあります。
で、父と子の話としては、読んでいただくしかないのですが、映画でもほぼそのままの独白があるので、こちらも味があっていいなと思っています。かいつまんだ内容としては、「夢の中で父親が出てきて、一緒に山を登っている。父親は先に行っているのだが、山の途中で待っていてくれる。それがわかるんだ」という話です。まーこれだけじゃわからないので、実際に本を読んでもらう必要がありますが、私としてはじわっとくる話でした。
もともとコーエン兄弟の映画はよく見る方です。好きな映画はファーゴです。ノーカントリーもその文脈で映画を見て、原作を読んで、どちらもかなり好きな部類に入るので繰り返し見たり読んだりしてます。コーエン兄弟というと、コミカルな悪夢をスタイリッシュに描くって感じのイメージが一般的なんでしょうか。私にとってはどちらかというと、結構、真正面から自分の無意識を直撃する映画というイメージです。なので、夢なんだけど超リアルというもの、なので映画そのものなのですね。
そんなコーエン兄弟の映画で、父と子の話が出てきて、それが自分の父親と自分の関係を思うときの重要なイメージになる。これは自分にとってはすごくうれしいことだし、自分の拠り所である父親像にもつながっているような気がします。
誰かとの話で「男にとって父親というのはヒーローである」というテーゼを主張したことがあります。話相手は「自分は違う」と否定していましたが…。その辺りの信念を型づくった物語のひとつですね。
そんなわけでおススメです。ちなみにマッカーシーのこの後の作品が「ザ・ロード」でこちらが「父と子」の話としては王道です。なぜこちらを紹介しないのかといえば、未読だからです(ドーン)。言い訳をすると、私は4年前に父が死んでからどうも父と息子系の話に涙腺が弱いので、時間を置きながらそれ系の小説を読んでいるんですね~(涙)。心の底から読みたいと思っています。マッカーシーは現代のアメリカ文学界ではやっぱり外れがないので。
それでは、まだシリーズを続けます。次は何にしようか。。。